マイヨールの本棚

読んだ本の感想と、雑記ブログです。

美術・アートを題材にした小説1

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マイヨール像

 原田マハ小説の選び方。

原田マハ作品を初めて読む人へ。

 

 アマゾンの検索で、「美術 小説」と

入力して多く出てくる作家は原田マハ

女流作家だ。

 

大学を2つ卒業し、アメリカの美術館で

学芸員として働いた経歴を持つ異色の

作家。

 

原田マハの小説の中でも、絵画や画家

が登場する小説だけを選んでみる。

 

『暗幕のゲルニカ

『楽園のカンヴァス』

『ジヴェルニーの食卓』

『常設展示室』

サロメ

『アノニム』

とりあえず6冊。

この6冊、同じ作家さんでもかなり

雰囲気が違うのだ。

 

さて、あなたが原田マハを初めて

読むつもりなら、お勧めは一番万人

受けする2冊だろう。

 

『暗幕のゲルニカ

『楽園のカンヴァス』

この2冊は一般向け。

幅広い年齢層が楽しめる絵画ミステ

リー。男性が読んでも女性が読んで

も楽しめる感じだ。

『暗幕のゲルニカにはピカソの名

ゲルニカが登場する。

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『楽園のカンヴァス』にはルソーの

『夢』が登場する。

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『暗幕のゲルニカ』と『楽園のカンヴァ

ス』は原田マハの絵画を扱った小説の中

では、取り上げている絵画が少なく、し

かも有名な絵画を題材に小説を書いてい

る長編小説。

 

特に絵が好きでない人でも、話のタネに

1冊原田マハという作家の本を読んでみ

なら、まずはこの2冊のうちどちらか

を読むのがいいと思う。

ピカソアンリ・ルソー。絵があまり

好きな人でなくても、知識がなくてもミ

ステリーとして十分楽しめる小説だった。

80歳の父親も喜んで読んでいた。)

 

『暗幕のゲルニカは9.11で最愛の

夫を亡くした女性の再生の物語。

9.11のテロに対する憎しみが渦巻くアメ

リカMoMAで、平和の象徴的ピカソの名

ゲルニカを展示するために奔走する話。

主人公はMoMAゲルニカを展示する交

渉のためスペインに向かうが、ゲリラ組

織に攫われてしまう。

同時並行で進む過去の話はピカソの愛人

ドラ・マールを主人公として語られる。

ピカソの愛人の中でただ一人、子供を産

まかった実在の女性。

現代の主人公は、スペインでドラ・マー

ルの影を伺わせる女性に出会うのだけれ

ど、なかなか繋がりが明らかにされず、

とても気になる。

 

『楽園のカンヴァス』アンリ・ルソー

の若き女性研究者とMoMA学芸員男性

が謎の富豪の邸宅に招かれ、7日間絵画

の謎解きを競う話だ。富豪がみせた絵は

本当にルソーが描いた絵なのか?

それとも贋作なのか?

冒頭で登場する、後年の女性研究者は、

美術館の監視員として一人で美しい娘を

育てている。田舎でシングルマザーとし

ひっそりと生活する日々。このハーフの

美少女の父親が誰なのか、気になってた

まらない。

ラストの男性学芸員との再会シーンが胸

を打つ。

 

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上記2冊に対して、

『ジヴェルニーの食卓』『常設展示室』

サロメは絵がかなり好きな女性向け。

年齢層は30~40代向けといった感じ。

とりあげてある絵画がマイナーで知らない

人が多そうなので、登場する絵画をわざわ

ざネット検索する気のない人は面倒になる

かもしれない。

 

予備知識として、

ジヴェルニーというのは、画家モネの家が

あったフランスの田舎町の名前。

サロメというのは昔のオスカー・ワイルド

という、同性愛者の作家が書いた小説。

常設展示室は美術館が所蔵している作品

をいつも展示している部屋の事。

 

この3冊の中では、『常設展示室』が一

番読みやすい。

テーマも親の死、不倫、肉親との別れ

などとなっている。

主人公は、美術にかかわる仕事をして

いる女性達だ。

 

サロメ原田マハの小説の中でも

珍しく、かなり退廃的な小説。

オスカー・ワイルドの本「サロメ」の

挿絵を描いた、オーブリー・ビアズリ

ーという青年とその姉メイベルが主人

公。二人とも実在の人物だ。

オーブリーとワイルドの間にはちょっ

と同性愛的雰囲気が漂う。

さらに、オーブリーの姉メイベルは舞

台女優として成功するチャンスを掴む

ため、パトロンの劇場主の嫌らしい親

父と関係を持つが捨てられてしまう。

 

弟オーブリーの病と同性愛。つかの間

の成功。姉メイベルの野心と脂ぎった

デブの劇場主との愛人関係が、世紀末

の退廃的な怪しげな雰囲気をまとって

描かれる。

 

気持ちが悪かったり、怖かったりはし

ないけれど、読後感が決して明るくは

ない小説だった。

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この絵はサロメの挿絵で、オーブリー

が描いた。

この絵を描いた画家の話というだけで

原田マハの『サロメ』がどんな雰囲

気の小説か想像が付くだろう。

退廃的なロックなどが好きな女性には

お勧めの幻想的な小説だ。

 

『ジヴェルニーの食卓』は短編小説集

とてもとても洗練されていて、素敵な

小説なんだけれど、印象派ドガと交

流があった女流画家メアリー・カサッ

トが登場したりするので絵画と画家の

周辺情報に詳しい、若干知識がない人

だと少々その面白さが伝わらない気が

した。

 

 『アノニム』は異色のライトノベル

ライトノベルを普段あまり読まない人

にとっては、これは残念ながらあまり

面白くない。

やたらにカタカナが多くて、登場人物

も多い。ルパン三世の小説版みたいに

軽いタッチの小説。一番初めにこれを

読んでしまったら、原田マハを2度と

読まなかっただろうなあ。

 

結論としては、原田マを読む人には

『楽園のカンヴァス』

『暗幕のゲルニカ

のどちらかを読むといいと思う。

この2冊はアマゾンの読者レビューも

かなり評価が高いのでお勧めです。